成果目標では社員は育たない|中小企業が取り組むべき行動設計型の人材育成

目次

社員を動かす方法は変化している

多くの企業では、社員の成長や成果を促すために、目標設定や評価制度を活用しています。

売上目標、利益目標、業務改善目標など、会社として達成すべき目標を明確にし、その達成に向けて社員を動かしていく方法です。

もちろん、目標を設定することは重要です。しかし近年では、「高い目標を掲げれば社員の意欲が高まる」というマネジメントが、機能しにくくなっている場面も増えています。

以前は、組織内で競争を促し、「誰よりも成果を出す」「会社の期待に応える」という価値観によって、社員の行動を引き出すことができる場面がありました。

しかし現在は、仕事だけではなく、自分自身の価値観や働き方を大切にする人も増えています。

そのため、単純に目標を高く設定したり、競争意識を刺激したりするだけでは、社員の主体的な行動につながらないケースもあります。

これからの人材育成では、「成果を求める」だけではなく、「成果につながる行動を設計する」という視点が必要になります。

成果目標だけでは社員は育たない

企業では、「売上を上げる」「利益を増やす」「顧客満足度を高める」といった成果目標が設定されます。

しかし、成果目標だけでは、社員は具体的に何を改善すればよいのか分からないことがあります。

例えば営業担当者に対して、

「もっと売上を伸ばしてください」

と伝えた場合、本人は何を変えればよいのでしょうか。

訪問数が足りないのか。
顧客との関係構築に問題があるのか。
提案内容が弱いのか。

売上という結果は、さまざまな行動の積み重ねによって生まれます。

例えば、営業の場合、

売上向上

商談数

顧客との接点数

ヒアリング力

課題発見力

提案力

クロージング力

というプロセスがあります。

売上が伸びない場合、単純に「営業力が不足している」と考えるのではなく、どの段階に問題があるのかを見る必要があります。

改善すべきポイントによって、必要な支援は変わります。

管理職が見るべきなのは、最終的な成果だけではありません。

成果につながる途中の行動を分解し、社員が改善できるポイントを明確にすることが重要です。

社員育成には「仕事の見える化」が必要

社員が成長しない理由の一つに、「何を身につければよいのか分からない」という問題があります。

多くの企業では、

「経験を積めばできるようになる」
「先輩の仕事を見て覚える」

という育成になっています。

もちろん、経験から学ぶことは重要です。

しかし、このやり方では、「〇年やったら一人前」というような、曖昧な基準になり、教える側も、ただ、自分の経験を伝えるだけになりがちです。

また、教える側と教えられる側の関係性によって、学習効果に差が出ることもあります。

必要なのは、仕事で必要となるスキルや能力を見える化し、「何ができれば次の段階に進めるか」を明確にすることです。

例えば、

レベル1:
基本的な業務を理解し、指示を受けながら実行できる

レベル2:
判断基準を理解して対応できる

レベル3:
状況に応じて改善提案できる

というように、成長段階を整理します。

重要なのは、スキルの見える化を社員評価のためだけに使わないことです。

目的は、社員を比較することではありません。

「次に何を身につければ成長できるのか」

という成長の道筋を示すことです。

任せるためには、行動を設計する

管理職の悩みとして多いのが、

「部下に仕事を任せられない」

という問題です。

任せると品質が下がる。
結局、自分が確認や修正をすることになる。
そのため、管理職自身が仕事を抱えてしまう。

この状態になると、社員は成長する機会を失い、管理職もさらに忙しくなるという悪循環が生まれます。

しかし、本来「任せる」とは、単純に仕事を渡すことではありません。

仕事を任せる前に、

・どのスキルが必要なのか
・どこまで判断できる状態なのか
・どの部分はサポートが必要なのか

を整理する必要があります。

ここでは、仕事を渡すことではなく、成長できる環境を設計することが、管理職の役割になります。

整理するとこうなります。

従来:

仕事を渡す

任せる


本来の姿:

必要な行動を整理する

習得状況を見る

裁量範囲を広げる

管理職がやるべきことは、「全部教える」でも「丸投げする」でもなく、部下の成長段階に応じた、権限移譲と必要な支援を行うことです。

プロセス管理によって成長のボトルネックを発見する

社員の成果が出ないとき、多くの企業では「本人の能力不足」と考えてしまいがちです。

しかし、実際には、個人の能力以外にも原因があります。

例えば営業の場合、

・顧客へのアプローチ方法が整理されていない
・ヒアリング項目が決まっていない
・提案方法が属人的になっている
・上司からのフィードバックが不足している

など、業務プロセス側に問題があるケースもあります。

大切なのは、社員個人を責めることではなく、成果を妨げている原因(ボトルネック)を発見することです。

組織として成果を高めるためには、

「誰が悪いのか」

ではなく、

どこを改善すれば成果につながるのか

という視点が必要です。


管理職の役割は「指導」から「成長支援」へ

これからの管理職に求められる役割は、単に仕事を教えることではありません。

社員が自分で考え、改善し、成長できる環境を作ることです。

そのためには、結果だけを見るのではなく、

「なぜその行動をしたのか」
「次に何を改善するのか」

を振り返る機会が必要です。

社員が、上司から評価されることだけを意識するのではなく、自分自身の成長に目を向けられるようになること。

それが、組織全体の成長につながります。

人材育成を個人の努力から、組織の仕組みへ

社員育成の課題は、社員個人の能力だけの問題ではありません。

社員が成長できる仕組みが、組織の中に存在しているかどうかが重要です。

成果目標を設定するだけでは、社員は必ずしも成長しません。

成果につながる行動を整理し、必要なスキルを明確にし、改善できる仕組みを作る。

これからの中小企業には、人が育つ環境を経営課題として設計することが求められています。


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